神社の歴史
多治速比売神社の創建は宣化天皇の時代(530年頃)と伝えられ、和泉国大鳥郡の延喜式内社二十四座のひとつに数えられます。明治初年までは神宮寺として総福寺と並存していましたが、神仏分離令により神社のみが存続され、後に郷社に列せられました。本殿は室町時代に建造され、現在は国の重要文化財に指定されています。境内には「坂上神社」「鴨田神社」などの末社13社が祀られ、総称して荒山宮と呼ばれています。
境内と本殿の特徴
本殿は室町時代の天文8年(1539年)から天文12年(1543年)にかけて再建されたもので、三間社入母屋造の建築様式が特徴的です。正面には千鳥破風と大きな向拝があり、その細部には龍や牡丹、唐獅子などが精巧に彫られています。特に向拝の手挟には、左右に透かし彫りが施されており、右面には芭蕉と蟷螂、左面には水と蓮などの装飾が彫られている点がユニークです。この芭蕉に蟷螂の彫刻は全国でも珍しく、多治速比売神社の見どころの一つです。
末社の概要
境内には、以下の末社が鎮座しています。
- 鴨田神社 - 本殿に向かって右側にある式内社で、1908年に泉北郡北上神村から合祀されました。
- 坂上神社 - 本殿に向かって左側にある式内社で、1910年に泉北郡久世村から合祀されました。阿智王の後裔と伝わる池辺直一族に関係するとされています。
- 葛神社 - 祭神は一言主神で、久世村から合祀されました。
- 金峯神社 - 祭神は金山比古命・金山比売命です。
- 天照社
- 大神社
- 住吉社
- 白山社
- 熊野社
- 春日社
- 弁天社(厳島神社) - 市杵嶋姫命を祀り、1907年に泉北郡北上神村から合祀されました。
- 福石社 - 祭神は福石大神です。
- 金高稲荷社 - 祭神は稲荷魂命です。
文化財と建造物
多治速比売神社の本殿は国の重要文化財に指定されており、細部に至るまでの彫刻や建築技術が当時の文化を色濃く伝えています。特に軒唐破風や蟇股に彫られた装飾は、美術的な価値も高く、見応えがあります。また、神社には拝殿、社務所、儀式殿などの建物も備わっており、参拝者が快適に過ごせるよう整備されています。
神事と祭事
多治速比売神社では、年間を通じてさまざまな神事が執り行われています。
- 歳旦祭 - 1月1日 午前8時
- 古武道奉納 - 1月3日 午前10時
- 節分祭 - 2月3日 午前10時
- 厄除火焚神事 - 2月3日 午後7時
- 夏越の大祓式 - 6月30日 午後4時
- 例大祭 - 10月5日に近い日曜日 午前9時
- 年越の大祓式 - 12月31日
これらの神事では、氏子によるだんじりや神輿の宮入が行われ、地域の人々や観光客で賑わいます。また、例大祭では多くの屋台も出店され、活気あふれる祭りの雰囲気が楽しめます。
アクセス
多治速比売神社へのアクセスは、泉北高速鉄道の泉ヶ丘駅から南海バス「宮山台回り」「堺東行き」または「津久野駅行き」に乗車し、「宮山台2丁」バス停で下車すると便利です。
豊かな自然と歴史ある神社の風景を堪能しながら、古代から続く神社の神聖な空気を感じることができます。