概要
西井家住宅は、西除川の右岸に位置し、周辺は江戸時代より「野田木綿」と呼ばれる木綿作りが盛んだった地域です。西井家の屋号も「木綿屋」と称され、木綿問屋として商売を行っていたと伝えられています。こうした背景から、地域の歴史や伝統に密接に関わり、堺市の歴史を物語る貴重な存在となっています。
文化財としての価値
2017年(平成29年)10月27日、西井家住宅の主屋、土蔵、門長屋が登録有形文化財に指定され、以下の特徴を持つ建物として登録されています。
主屋
主屋は木造平屋建で、茅葺の大和棟構造を採用し、建築面積は209平方メートルに及びます。江戸時代後期に建築されたもので、向かって右側に土間があり、その隣には式台玄関が配置されています。中の間の奥には仏間があり、西端部には座敷が設けられています。このような配置は、当時の建築様式や生活様式を反映しており、歴史的価値が高いとされています。
土蔵
土蔵は桁行6.4メートル、梁間3.8メートルの木造2階建で、瓦葺きの建物です。建築面積は25平方メートルあり、江戸時代後期に建てられました。主屋の東端部に接続され、敷地の東側に位置しています。外壁は腰竪板張で、上部は漆喰仕上げとなっており、二階部分には小窓が各所に設置されています。この土蔵も江戸時代の建築様式を良好な状態で残しており、文化財としての価値が認められています。
門長屋
門長屋は桁行19メートル、梁間3.9メートルの切妻造で瓦葺きの建物です。1834年(天保5年)に建築され、中央には大戸口が設けられ、東側に衣装蔵と米蔵、西側には使用人の居室が配置されています。また、附属屋部分には茶室と水屋が設置されています。これらの配置は、当時の生活スタイルを色濃く反映しており、建物としての価値が高く評価されています。
西井家住宅の意義と保存状態
西井家住宅は堺市東部、西除川流域の北野田に位置しており、古くから木綿作りで栄えた地域の一部として、その歴史を物語っています。江戸時代から木綿問屋としての役割を果たし、屋号「木綿屋」として地域に根付いてきた西井家の歴史は、堺市内でも貴重なものです。
主屋は、木造平屋建で茅葺きの大和棟という伝統的な建築形式を持ち、堺市内では稀少な江戸時代の建物です。敷地内には主屋の東側に木造2階建の土蔵が配置され、門長屋も江戸時代に建てられたものが良好な状態で保存されています。こうした建物群は、地域の歴史や文化を後世に伝える重要な文化財とされています。
現地情報
西井家住宅へのアクセスは、南海高野線「北野田駅」から徒歩5分と便利です。ただし、内部は非公開であるため、見学は道路から外観のみとなります。保存状態が良好な建物の姿を外から見学し、歴史と風情を感じることができるスポットです。
江戸時代から続く西井家住宅は、堺市の歴史や文化を知る上で欠かせない存在であり、外観だけでも訪れる価値がある建物です。文化財として保護されていることから、今後も良好な状態で保存され、地域の歴史を伝える役割を果たし続けることでしょう。