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南宗寺

(なんしゅうじ)

茶人ゆかりの、枯山水庭園が美しい禅寺

南宗寺は、大阪府堺市堺区に位置する臨済宗大徳寺派の寺院です。山号は龍興山、本尊は釈迦如来。三好氏の菩提寺として知られています。茶人の武野紹鴎や千利休が修行したことでも有名で、堺の町衆文化の発展に大きく寄与しました。境内には、古田織部が作庭したと伝えられる枯山水庭園があり、国の名勝にも指定されています。

南宗寺の歴史

南宗寺の歴史は大永6年(1526年)にさかのぼります。当時、古嶽宗亘(こがくそうこう)が堺南荘に庵を構え「南宗庵」と命名したことがその始まりです。後にこの庵は、大林宗套(だいりんそうとう)によって三好長慶の父・三好元長の菩提を弔う場として再建され、「南宗寺」と改名されました。

再建と拡張

南宗寺の創建当時は堺市宿院町付近にあったと伝えられていますが、天正2年(1574年)の戦火で一部が焼失し、元和5年(1619年)には現在の場所に移されました。この再建には沢庵宗彭(たくあんそうほう)が尽力し、その後も寺院は整備されていきました。今でも江戸時代の禅宗寺院の風情が漂い、参拝者に歴史的な趣を感じさせます。

境内の建築物と文化財

南宗寺には多くの見どころがあり、仏殿や方丈、茶室「実相庵」など、各所に歴史の息吹が感じられます。特に枯山水庭園は国の名勝に指定されており、静寂と美を兼ね備えた空間です。

仏殿(重要文化財)

南宗寺の仏殿は、禅宗様式で再建された建築物で、承応2年(1653年)に再建されました。この建物は入母屋造、瓦葺きで、屋根が二層構造となっているのが特徴です。仏殿内部は石敷きの土間で、中央には本尊である釈迦如来像が安置されています。天井には狩野信政による「八方睨みの龍」が描かれており、その迫力が人々を惹きつけます。大阪府下で唯一の禅宗様式の仏殿建築として、非常に貴重です。

山門(重要文化財)

南宗寺の山門は、正保4年(1647年)に再建されました。この門は三間一戸、入母屋造、本瓦葺きの二階建てで、上層には手すり付きの縁が巡る楼門形式です。上層の軒裏には扇状の垂木が見られ、禅宗建築の技法が施されています。この山門は「甘露門」とも呼ばれ、威厳のある佇まいが特徴です。

唐門(重要文化財)

唐門は仏殿の右側に位置する小規模な門で、仏殿と同時期に建てられたと考えられています。柱間をつなぐ梁の彫刻や、柱の先にある木鼻と呼ばれる装飾など、仏殿や山門と同じ細部のデザインが施されている点が見どころです。

方丈と枯山水庭園

南宗寺の方丈は、1960年(昭和35年)に再建されました。その南側には枯山水庭園が広がり、国の名勝に指定されています。この庭園は、元和5年(1619年)頃に築かれたと考えられ、寺伝によると古田織部が手掛けたと伝えられています。庭園には白砂が敷かれ、小高くなった地形を利用して枯滝が組まれています。枯滝からは小石で表現された枯流れが続き、中央部に位置する石組みや石橋と美しく調和しています。

茶室「実相庵」

実相庵は千利休が好んだ様式で造られた茶室です。1960年に再建されており、落ち着いた雰囲気の中で茶道の歴史を感じることができます。

その他の境内の施設

禅堂・客殿・庫裏

禅堂や客殿、庫裏などの施設も併設されており、これらの建物は寺院としての機能を支えています。特に庫裏は2011年に再建され、南宗寺を訪れる人々のための環境が整備されています。

徳川家康の墓

境内には徳川家康の墓とされる場所も存在します。これは東照宮本殿の跡地に三木啓次郎によって1967年に建てられたもので、歴史的な意味合いが込められた場所です。

三好一族や千利休一門の墓

南宗寺には三好元長・三好長慶など三好一族の墓や、千利休、武野紹鴎など茶道の大家の墓もあります。表千家、裏千家、武者小路千家といった茶道流派の一門の墓が並び、茶道に対する敬意が感じられる場所です。

枯山水庭園の美しさ

方丈前に広がる枯山水庭園は、仏殿等が建築された江戸時代初期のものであると考えられます。この庭園は前面に広がる白砂と小石で表現された枯流れが見どころで、石橋と枯滝が絶妙に調和した美しい景観が楽しめます。特に横石の石組みが庭園全体のアクセントとなり、枯山水庭園の醍醐味を堪能することができます。

南宗寺の文化財

南宗寺はその文化財としても価値が高く、多くの重要文化財に指定されています。

重要文化財

南宗寺の文化財には以下のものが指定されています:

国指定名勝

また、南宗寺庭園は1983年(昭和58年)に国の名勝として指定されました。この庭園は、日本の伝統的な枯山水庭園として保存されており、多くの観光客や研究者が訪れる貴重な文化財です。

南宗寺へのアクセス

南宗寺へは公共交通機関が利用できます。最寄り駅は阪堺電気軌道阪堺線の「御陵前停留場」で、そこから徒歩5分で到着します。また、南海バスの山之口橋停留所や大仙西町団地前停留所も利用可能です。訪れる際には便利なアクセス方法を確認すると良いでしょう。

南宗寺は歴史と文化が凝縮された寺院であり、訪れる人々に深い感銘を与えます。三好氏ゆかりの菩提寺として、また、千利休や武野紹鴎が修行をした場所として、堺の町衆文化を今に伝える貴重な存在です。境内に広がる静寂の空間と美しい庭園は、日本の伝統美を堪能する絶好の場所です。南宗寺を訪れることで、歴史とともに心の安らぎを得られることでしょう。

Information

名称
南宗寺
(なんしゅうじ)

堺・泉南

大阪府