概要
阪之上家住宅は、1918年(大正7年)頃から浜寺地区で分譲が開始された海浜別荘地に建てられました。この洋館は、1921年(大正10年)頃に計画されて実現しなかった浜寺ホテルの設計の一部を活用して建築されたと伝えられています。計画当時の時代背景や、設計を手がけた建築家の技術が反映されており、堺市の歴史的景観の一部となっています。
建物の構成
洋館
阪之上家住宅の洋館は、煉瓦造の2階建で、建築面積は37平方メートルです。特徴的なファサード構成として、柱型が建物のパラペットまで通っています。これにより、重厚感があると同時に、当時の洋風建築のスタイルを象徴しています。
離れ座敷
洋館の南東には、離れ座敷が位置しています。離れ座敷は、1934年(昭和9年)に建築されたもので、木造の平屋建て、瓦葺きで寄棟造の建築様式です。建築面積は107平方メートルで、内部には上質な造りの床・棚・書院が備えられており、茶室も張り出す設計になっています。日本の伝統的な様式と調和し、落ち着いた空間を提供するデザインが魅力です。
外塀
住宅の周囲には、延長19メートルにわたる外塀が設けられています。この外塀には門柱も含まれており、洋館と調和するようなデザインが施されています。また、外塀のデザインは洋館の柱型意匠を取り入れており、洋風と和風の要素を見事に融合させた構造になっています。
蔵
離れ座敷の東側には、1934年に建築された木造の2階建ての蔵が位置しています。建築面積は20平方メートルで、切妻造、桁行3間、梁間2間の造りです。洋館のデザインに合わせ、蔵の外観にはバットレスが街路側に設置され、洋館と調和するような設計が施されています。
渡廊下
敷地内には、かつての主屋と離れ座敷を結ぶための渡廊下が存在しています。渡廊下は木造で、建築面積は6.5平方メートルです。この通路は現在の主屋と中庭部分の結界としても機能し、全体の建物配置のバランスを整えています。
文化財としての価値
阪之上家住宅は、1999年(平成11年)11月18日に、洋館・離れ座敷・外塀・蔵・渡廊下がすべて国の登録有形文化財として登録されました。これにより、この住宅の歴史的価値や建築的な特徴が公式に認められたことになります。阪之上家住宅は、当時の日本における洋風建築と日本建築の融合を象徴する重要な建築物であり、歴史的な建物として現在も地域の象徴的な存在となっています。
現地情報
所在地
阪之上家住宅の所在地は大阪府堺市西区浜寺昭和町5丁594です。
公開状況
阪之上家住宅は現在も居住用住宅として使用されているため、外観からの見学のみが可能です。内部の公開は行われていないため、外観を見学する際は礼儀を守り、現地の指示に従って見学してください。
交通アクセス
阪之上家住宅へは南海本線の浜寺公園駅から徒歩5分でアクセス可能です。堺市の観光と合わせて訪れると便利です。
周辺施設
阪之上家住宅の周辺には、近江岸家住宅や小倉家住宅といった他の歴史的建築物も点在しています。これらの施設と合わせて訪れることで、堺市の歴史や文化に触れる良い機会となるでしょう。
阪之上家住宅は、当時の日本の建築様式と西洋建築の要素を調和させた貴重な建物です。その歴史的背景や建築的特徴を知ることで、さらに深くその魅力を感じられるでしょう。堺市を訪れる際には、ぜひこの文化財を巡って、堺の歴史と文化を体感してください。