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いたすけ古墳

(こふん)

いたすけ古墳は、大阪府堺市北区百舌鳥本町に位置する、前方後円墳の形をした古墳です。この古墳は、百舌鳥古墳群の一部として構成され、国の史跡に指定されています。周囲には多くの住宅街が立ち並んでいますが、古墳周辺には自然が残され、タヌキが生息する環境も見られます。

いたすけ古墳は、百舌鳥古墳群のほぼ中央に位置し、他の古墳と共に堺市の歴史的な価値を形成しています。この古墳は大仙陵古墳の南、上石津ミサンザイ古墳の東にあり、墳丘の長さは約146メートルと、百舌鳥古墳群では8番目の規模を誇ります。墳丘は3段に築かれ、南側には造り出しが設けられていますが、埋葬の主体部分の構造や副葬品の詳細は明らかにされていません。

善右ヱ門山古墳

古墳群内には、いたすけ古墳と共に残された善右ヱ門山古墳も存在します。この古墳は国の史跡に指定され、貴重な遺産として守られています。かつて、いたすけ古墳周辺には他の陪塚も存在していましたが、現在まで残っているのは善右ヱ門山古墳のみです。

保存運動の歴史

いたすけ古墳は、昭和30年(1955年)に破壊の危機に直面しました。当時、この土地は私有地であり、土砂の採集や住宅地の造成が計画されていたためです。しかし、堺市の財政難により土地の買い取りが難しい状況にありました。そのため、市民運動が発足し、古墳の保存を目指して活動が行われた結果、今日までこの歴史的な遺産が保護されています。

文化財としてのシンボルマーク

保存運動の一環で後円部から出土した衝角付冑形埴輪(しょうかくつきかぶとけいはにわ)は、堺市の文化財保護の象徴として認知され、この埴輪の形状がシンボルマークとして使用されています。衝角付冑形埴輪は現在、堺市博物館に展示され、見学者に古墳文化の奥深さを伝えています。

周濠と古墳の保存状況

保存運動が行われた当時、周濠に橋を架けて重機を導入し、古墳内の樹木の伐採が行われました。この伐採は途中で中断されましたが、古墳の一部ははげ山のような状態になり、現在ではその部分に草が生い茂っています。2019年の時点で、この橋の一部は残され、保存運動の名残を今に伝えています。

水質改善の取り組み

1980年代には、古墳周囲の水質悪化による異臭に関する苦情が周辺住民から上がりました。そのため、池の水を抜き、堆積したヘドロを除去する作業が行われました。その際、環濠の南西部に沈没していた木造の小型船が発見され、調査によって昭和初期以前に製造された和船であることが確認されました。

保存・整備への支援

近年、古墳周辺の竹林が繁茂し、土砂の崩落が懸念されています。そのため、堺市では整備事業のための寄付を呼びかけており、ふるさと納税の制度も活用されています。地域の人々や歴史ファンからの支援を受け、いたすけ古墳は今後も保護・整備が進められています。

いたすけ古墳の構造と規模

いたすけ古墳の墳丘は、以下のような規模です。

墳丘の詳細

文化財指定状況

いたすけ古墳は、昭和31年5月15日に「いたすけ古墳」として国の史跡に指定され、平成26年3月18日には百舌鳥古墳群としての指定範囲が拡大されました。さらに、堺市の有形文化財として、衝角付冑型埴輪が平成13年12月20日に指定されています。

観光情報とアクセス

いたすけ古墳へのアクセスは、JR阪和線の百舌鳥駅から徒歩約10分の距離にあります。近年、百舌鳥古墳群は世界遺産としても注目されており、古墳群を巡る観光ルートが整備されています。訪れる際には、歴史と自然が調和した景観を楽しむことができ、古墳の保存活動に触れる機会ともなるでしょう。

Information

名称
いたすけ古墳
(こふん)

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