善右ヱ門山古墳
古墳群内には、いたすけ古墳と共に残された善右ヱ門山古墳も存在します。この古墳は国の史跡に指定され、貴重な遺産として守られています。かつて、いたすけ古墳周辺には他の陪塚も存在していましたが、現在まで残っているのは善右ヱ門山古墳のみです。
保存運動の歴史
いたすけ古墳は、昭和30年(1955年)に破壊の危機に直面しました。当時、この土地は私有地であり、土砂の採集や住宅地の造成が計画されていたためです。しかし、堺市の財政難により土地の買い取りが難しい状況にありました。そのため、市民運動が発足し、古墳の保存を目指して活動が行われた結果、今日までこの歴史的な遺産が保護されています。
文化財としてのシンボルマーク
保存運動の一環で後円部から出土した衝角付冑形埴輪(しょうかくつきかぶとけいはにわ)は、堺市の文化財保護の象徴として認知され、この埴輪の形状がシンボルマークとして使用されています。衝角付冑形埴輪は現在、堺市博物館に展示され、見学者に古墳文化の奥深さを伝えています。
周濠と古墳の保存状況
保存運動が行われた当時、周濠に橋を架けて重機を導入し、古墳内の樹木の伐採が行われました。この伐採は途中で中断されましたが、古墳の一部ははげ山のような状態になり、現在ではその部分に草が生い茂っています。2019年の時点で、この橋の一部は残され、保存運動の名残を今に伝えています。
水質改善の取り組み
1980年代には、古墳周囲の水質悪化による異臭に関する苦情が周辺住民から上がりました。そのため、池の水を抜き、堆積したヘドロを除去する作業が行われました。その際、環濠の南西部に沈没していた木造の小型船が発見され、調査によって昭和初期以前に製造された和船であることが確認されました。
保存・整備への支援
近年、古墳周辺の竹林が繁茂し、土砂の崩落が懸念されています。そのため、堺市では整備事業のための寄付を呼びかけており、ふるさと納税の制度も活用されています。地域の人々や歴史ファンからの支援を受け、いたすけ古墳は今後も保護・整備が進められています。
いたすけ古墳の構造と規模
いたすけ古墳の墳丘は、以下のような規模です。
墳丘の詳細
- 墳丘長:約146メートル
- 後円部:直径約90メートル、高さ約12.2メートル
- 前方部:幅約99メートル、高さ約11.4メートル
文化財指定状況
いたすけ古墳は、昭和31年5月15日に「いたすけ古墳」として国の史跡に指定され、平成26年3月18日には百舌鳥古墳群としての指定範囲が拡大されました。さらに、堺市の有形文化財として、衝角付冑型埴輪が平成13年12月20日に指定されています。
観光情報とアクセス
いたすけ古墳へのアクセスは、JR阪和線の百舌鳥駅から徒歩約10分の距離にあります。近年、百舌鳥古墳群は世界遺産としても注目されており、古墳群を巡る観光ルートが整備されています。訪れる際には、歴史と自然が調和した景観を楽しむことができ、古墳の保存活動に触れる機会ともなるでしょう。