小阪城は、大阪府東大阪市小阪に位置する城郭風の建造物です。理髪店を営む家主(以下「城主」)が廃材を活用し、自力で建てた自宅兼店舗であり、歴史的な背景を持たない独自の建築物です。 城の名前がついているものの、建物全体が城郭風にデザインされており、地域の目印として親しまれています。
小阪城は、城主の父が1932年に創業した理髪店を原点とします。城主は1970年代に経営を引き継ぎ、廃材を用いて店舗の改装を行い、その余った資材で物置を屋上に建設しました。物置が増えるにつれて、それらを櫓型に改造することを思いつき、やがて五層の天守閣を完成させました。
外観だけでなく内装も工夫されており、千畳敷の大広間を模しただまし絵や、金色の折り紙300枚を使用した「黄金の茶室」などが特徴です。これらはすべて城主の独創的なアイデアによって実現されました。
小阪城の総工費はわずか5万円という驚くべきものでした。最も費用がかかったのは10万円の金箔が施されたお椀であり、次に天守閣のトタン板が高額でした。それ以外の部分は、ほとんど廃材を活用して手作りされたものです。
城主は学生時代から日本建築に興味を持ち、城巡りを趣味としていました。また、二条城を見学した際に書院造りに強く影響を受けたとされています。この経験が小阪城のデザインに反映されています。
城主の先祖は近江国の磯野氏で、近江源氏京極氏からの分家にあたります。幕末の廃藩置県で本家が東京へ移る一方、分家筋は貧困を余儀なくされました。その中で「自力で城を作る」という情熱が小阪城の誕生につながりました。
2018年、近畿地方を襲った台風21号により、小阪城の天守部分が大きな被害を受けました。天守の上部が吹き飛ばされるという深刻な損壊を経験しました。
NHK BSプレミアムの番組「まいど!修繕屋です」(2019年1月放送)では、小阪城の再建が取り上げられました。このプロジェクトを通じて城は一部復元され、壁画としても新たな命を吹き込まれました。また、台風への対策として一層を継ぎ足し、実質的な再建を果たしました。
小阪城へのアクセスは、近鉄奈良線の河内小阪駅が最寄り駅です。駅から徒歩圏内に位置しており、気軽に訪れることができます。
小阪城は、廃材を活用して自力で建築されたユニークな城郭風建物です。その外観と内装の工夫、さらには城主の建築への情熱や家系の背景が一体となり、訪れる人々を魅了しています。大阪を訪れた際は、ぜひこの手作りの「城」を体感してみてはいかがでしょうか。