桜谷軽便鉄道は、大阪府北摂地域の豊能町にある個人所有の庭園鉄道です。この鉄道は法律上の鉄道ではなく、あくまで鉄道模型として扱われていますが、設備や車両は本格的なものが揃っており、大人も乗車できるという特別な鉄道です。
桜谷軽便鉄道は大阪府豊能郡豊能町に所在し、個人の趣味として設置された庭園鉄道です。軌間は15インチゲージで、本格的な鉄道設備が整備されていることが特徴です。この名称は、かつて同地域に存在していた「桜谷鉱山」にちなんで命名されました。
桜谷軽便鉄道の設立者である持元 節夫氏は、半導体関連の会社を共同経営していましたが、退職後に庭園鉄道を趣味として始めました。1990年代半ば、大阪で偶然にも鉄道用レールを販売している会社を見つけ、6kgのレールを1本7,000円程度で購入したことが、この鉄道の始まりとなりました。初めは庭の装飾としてのレール設置でしたが、徐々にレールを延長し、手押しトロッコやバッテリー駆動の車両も導入されました。
鉄道設備の充実に伴い、見物客も増えてきたため、近隣住民への配慮も必要となり、2001年に現在の南山線に移転しました。
桜谷軽便鉄道の歴史は、1998年5月5日の軌道線全通から始まります。その後も設備の増設や車両の製作を続け、2001年8月には南山線が開通しました。以下に、各年ごとの重要な出来事を年表形式でご紹介します。
1990年代前半: レールを購入し、観賞用として庭に設置。
1998年: 桜谷軽便鉄道の軌道線が全通。
2001年: 南山線が開業し、現在の形に移行。
その後も桜谷軽便鉄道は成長を続け、車両や設備の増設を行い、2023年には再び運転会を再開するなど、活動が続けられています。
桜谷軽便鉄道の特徴は、すべての設備が手作りでありながら、本格的な鉄道体験ができることです。大人でも車両内部に乗り込んで走行でき、信号や標識も実際に動作しているため、運転には免許が必要とされるほどのリアルさが備わっています。また、鉄道に関する部品も日用品を流用して作られており、手作りの工夫が随所に見られます。
桜谷軽便鉄道では、レールや車輪など一部のパーツを除いて、日常の道具や廃品をリサイクルして部品が作られています。例えば、転轍機には鉄アレイ、ヘッドライトには蚊取り線香の缶が使用され、鍋の取っ手がブレーキハンドルとして活用されるなど、ユニークな発想が光ります。
1998年に開通した軌道線は、オーナーの自宅周囲に敷設された環状線です。家屋と塀の間の狭い空間に敷設されたため、軌間を381mmに設定していました。しかし、より充実した設備を求めて南山線への移行が進み、軌道線は2004年頃から休止状態となりました。
南山線は2001年8月10日に開通し、全長150メートルの環状線です。桜谷駅と風の峠駅を結ぶ路線で、電化されています。電動車両が走行する鉄道模型とは思えないスケールの大きさと本格的な設備が魅力です。
桜谷軽便鉄道は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で一時休止していましたが、2023年から再び運転会が開催されています。予約制での運転会に加え、現在では見学者が自由に訪れることができる日も増えてきています。
2023年8月、持元節夫氏が逝去されましたが、その情熱と功績は多くの鉄道ファンに感動を与え続けています。持元氏の夢と情熱が生み出した桜谷軽便鉄道は、今後も訪れる人々に楽しさと驚きを提供し続けることでしょう。
桜谷軽便鉄道は、個人の趣味が集大成された本格的な庭園鉄道です。その手作り感とユニークな工夫により、訪れる人々を魅了し続けています。鉄道に対する情熱と創意工夫で生み出された桜谷軽便鉄道は、今後もその歴史を刻み続けることでしょう。