野間の大ケヤキは、大阪府豊能郡能勢町に位置するケヤキの巨木で、国の天然記念物に指定されています。樹齢は1,000年以上とされており、大阪府下でも最大級のケヤキとして知られています。1948年1月14日に国の天然記念物に指定され、この木の存在は長きにわたり地域の象徴として敬われてきました。
野間の大ケヤキが生育する場所は、かつて蟻無宮(ありなしのみや)という神社の境内で、同社のご神木として崇められていました。この蟻無宮は1220年に創建されたと伝えられ、神社の砂にはアリ除けのご利益があるとされていました。現在、蟻無宮は約1キロ北の野間神社に合祀されており、大ケヤキは地域住民によって大切に守られ続けています。
この巨木の高さは約30メートルに達し、幹回りは14メートル以上あります。また、枝は南北に38メートル、東西に42メートル広がり、7本の大枝が四方に伸びている姿が壮観です。能勢町が設置した「けやき資料館」によると、樹高は約27.37メートル、最大の枝張りは39.3メートルとされています。西日本最大級のケヤキで、地域のシンボル的存在です。
ケヤキは冷涼な気候を好むため、野間のある能勢町はその生育に適しています。能勢町は大阪市内よりも標高が高く、野間稲地の標高は220メートルほどで、周囲には妙見山や歌垣山などがそびえる自然豊かな盆地となっています。気温が低く湿度が高いこの環境が、千年もの時を経てケヤキが成長するのに適した環境を提供しています。
野間の大ケヤキは古くから地域住民にとって神聖な木として崇められてきました。この木の芽吹きが良いとその年は豊作となり、逆に芽吹きが悪いと凶作になると考えられ、農業を営む人々にとっては年の豊凶を占う木でもあったといわれています。
蟻無宮は「蟻無」の名前からアリ除けのご利益があるとされていましたが、実は「有無」とも書かれることがありました。これは平安時代の歌人、紀貫之が源公忠に贈った和歌「手にむすぶ水にやとれる月影の あるかなきかの世にこそありけれ」に由来しているとされています。
1946年には植物学者の本田正次により調査が行われ、数々の保護活動が始まりました。1994年には樹木医により、樹勢が衰えた木の治療が行われ、ヤドリギの除去などの管理が行われています。現在もその大きな樹冠は健在で、多くの野鳥にとっても絶好の繁殖地となっており、特にアオバズクなどのフクロウ科の鳥が毎年営巣する姿が見られ、愛鳥家たちが訪れる人気スポットとなっています。
2004年には野間の大ケヤキのすぐ東側に「けやき資料館」が開設され、ケヤキに関する資料や保護活動の取り組みを展示しています。訪れる人々にとって、自然豊かな能勢町のシンボルであるこの木について学ぶことができる貴重な場所です。
野間の大ケヤキへのアクセス方法は以下の通りです。
野間の大ケヤキは、その壮大な姿と豊かな歴史から訪れる人々に感動を与えています。大阪府「みどりの百選」にも選定されており、春の芽吹きや夏の新緑、秋の紅葉といった四季折々の姿を楽しむことができます。豊かな自然と共に、ぜひ訪れてみてはいかがでしょうか。