概要
奥河内は、大阪府内の最高峰である金剛山や、ススキの広がる岩湧山をはじめ、登山やハイキングの名所が点在しています。また、光滝や荒滝を含む「滝畑四十八滝」など、美しい滝も見どころです。さらに、世界遺産である高野山へと続く「高野街道」や、南朝ゆかりの観心寺、天野山金剛寺といった歴史的な名所も多くあります。
この地域では、奈良時代や平安時代の古い歴史が息づいており、河内長野市内の各所には行基や空海にまつわる伝承も数多く残されています。また、長野温泉や天見温泉などの天然温泉も湧き出ており、かつては温泉地として栄えた歴史があります。
「奥河内」という名称の由来
「奥河内」という名称は近年普及したもので、行政上は南河内地域に分類されます。同じ南河内でも、北部の平野部や丘陵部に対し、奥河内は山間部や渓流といった特色を持っています。そのため、金剛山や岩湧山などの豊かな自然を強調する観光地名として「奥」を冠する名称が採用されました。
この名称は、観光地として知られる「奥日光」や「奥多摩」を参考にしており、現在では地域の文化財や歴史的名所を包括する観光名称として広く認知されています。
自然の景観
滝畑
滝畑四十八滝
石川上流に広がる滝畑四十八滝(河内長野市)は、秘境として知られる美しい滝群です。「光滝」「荒滝」「御光滝」といった滝がその代表で、特に光滝周辺には光滝寺や光瀧寺キャンプ場が整備され、自然の中での癒しを提供しています。ただし、滝畑ダムより上流の府道61号は道幅が狭く、アクセスには注意が必要です。(河内長野八景、新河内長野二勝「滝畑四十八滝」)
滝畑ダム湖畔
滝畑ダムは、大阪府内で最大規模を誇るダムです。湖畔には遊歩道やキャンプ場が整備され、訪れる人々に四季折々の自然を楽しむ機会を提供しています。また、冬にはオシドリが飛来し、多くの野鳥ファンの注目を集めています。さらに、ダム下流部の岩壁には地蔵菩薩と観音菩薩の二体の磨崖仏が彫られており、その歴史的価値も見逃せません。(新河内長野八景「滝畑ダムのオシドリ」)
丘陵・山岳
金剛山
金剛山(千早赤阪村)は、大阪府の最高峰で、金剛山地の主峰です。冬には近畿地方では珍しい樹氷が見られることで有名です。山の麓からはバスが運行しており、登山やロープウェイを利用して山頂を訪れることができます。また、役小角や楠木正成にゆかりの地が点在し、歴史好きにもおすすめです。
岩湧山
岩湧山(河内長野市)は、一面にススキが広がる美しい山です。特に秋には黄金色に輝くススキの草原が絶景を作り出します。山頂からの広大な景色はハイキング客に人気です。また、近隣には「岩湧の森四季彩館」などの施設があり、ムササビの観察なども楽しめます。(河内長野八景「岩湧山の雲海」、新河内長野八景「岩湧山頂の花すすき」)
歴史の景観
高野街道
高野街道
高野街道(河内長野市)は、高野山への参詣道として知られる西高野街道、東高野街道、中高野街道が合流する地点です。特に三日市町駅までの旧街道沿いには、酒蔵通りや三日市宿を代表とする歴史的な町並みが残っています。また、定期的に開催される「高野街道まつり」では、地元文化に触れることができます。
天見温泉と南天苑
天見温泉は、南北朝時代に流谷八幡神社の宮司によって開かれた湯治場がその始まりです。その後1935年に再興され、日本銀行本店や浜寺公園駅などを手掛けた建築家辰野金吾が設計した温泉旅館「南天苑」が建設されました。本館は登録有形文化財に指定されており、温泉の歴史と建築美を楽しむことができます。
名所旧跡
観心寺
観心寺(河内長野市)は、役行者の開創と伝えられ、日本で唯一北斗七星を祭るお寺として有名です。本尊如意輪観音像(国宝)をはじめ、多くの貴重な文化財を有します。境内は四季を通じて美しく、新西国三十三箇所の一つとして、多くの参拝客を迎えています。(河内長野八景「観心寺の寒梅」)
延命寺
延命寺は空海が地蔵菩薩を刻んで安置したことに由来するお寺で、境内には樹齢約1000年の「夕照もみじ」と呼ばれる楓があります。紅葉の名所として知られ、秋には赤く染まった木々が訪れる人々を魅了します。(河内長野八景「延命寺の紅葉」)
その他の観光施設
関西サイクルスポーツセンター
関西サイクルスポーツセンター(河内長野市)は、自転車をテーマにしたユニークな遊園地です。変わり種自転車に乗るアトラクションや、自然の中でのサイクリングなど、多彩な楽しみが用意されています。また、アニメによるCM放送でも知られています。
花の文化園・奥河内くろまろの郷
大阪府が運営する植物園「花の文化園」では、多種多様な花々を鑑賞できます。園内のピラミッド形の大温室には、熱帯植物や乾燥帯植物が植えられています。また、道の駅「奥河内くろまろの郷」には、地元の食材を使ったレストランや直売所があり、観光と買い物を楽しめるスポットです。
歴史
奥河内の歴史は非常に古く、旧石器時代の三日市遺跡や高向遺跡からは石器などが出土しています。奈良時代には観心寺や天野山金剛寺が草創され、平安時代には高野街道を通じて高野山へ参詣する文化がありました。
鎌倉時代には楠正成がこの地に七城を築き、元弘の乱の際には千早城で100日間に及ぶ戦いが繰り広げられました。また、江戸時代以降は高野参詣道の宿場町や温泉地として栄え、明治時代には高野鉄道の開通により観光地として多くの人々を集めました。しかし、その後の交通網の発達とともに観光地としての役割は減少していきました。
近年の取り組み
1990年代以降、地域の歴史的景観や自然環境を保存し、観光地として復興させるための取り組みが進められています。現在では河内長野駅を中心に観光案内所や案内板が整備され、観光名所へのアクセスも向上しています。
観光とアクティビティ
奥河内では登山やハイキング、歴史的建造物の見学、温泉でのリラクゼーションなど、多様なアクティビティが楽しめます。
主なハイキングコース
金剛山: 標高1,125メートルの山で、多くの登山ルートが用意されています。
岩湧山: ススキの名所として知られる山で、滝畑ダムからのルートが人気です。
高野街道: 歴史的な宿場町を巡るコースが整備されています。
交通アクセス
奥河内への玄関口となるのは南海電鉄・近鉄の河内長野駅です。南海難波駅からは南海高野線で約30分、近鉄阿部野橋駅からは近鉄南大阪線を経由して約40分で到着します。また、関西国際空港からはリムジンバス「Sorae」が河内長野駅まで運行しています。
自動車の場合、大阪外環状線や国道309号を利用するほか、南阪奈道路や阪和自動車道からのアクセスも可能です。
観光地を巡る際には、河内長野駅発の南海バスや1日フリーパス「河内長野・千早赤阪ワイドモックルカード」が便利です。
奥河内は、自然、歴史、文化が融合した観光地として、訪れる人々に多彩な魅力を提供しています。豊かな自然に囲まれたこのエリアで、日常を忘れるひとときをお楽しみください。