国の登録有形文化財「南天苑」
南天苑本館は、数寄屋風の入母屋造りによる木造2階建ての大規模な建築物です。日本建築の伝統的な美しさを残しながら、近代的なデザインを巧みに取り入れている点が特徴です。
広さ約3,000坪の敷地には美しい日本庭園が広がり、四季折々の自然を楽しむことができます。建物は2003年に国の登録有形文化財に登録されており、館内では歴史ある建築とともに、古き良き日本の趣を感じられます。
堺から天見へ移築された歴史的建築
現在の南天苑の建物は、もともと堺市の「大浜潮湯」の別館として建てられた家族湯です。室戸台風によって大浜潮湯が倒壊した後、建物は天見へ移築されました。
移築後は、大阪市阿倍野にあった料亭「松虫花壇」の別館として利用され、その後、1949年に温泉旅館「南天苑」として開業しました。現在も、建築そのものが天見温泉の歴史を伝える貴重な存在となっています。
高野山参詣とともに栄えた天見温泉
天見周辺にある紀見峠は、古くから高野山への参詣に利用されてきた街道沿いの地域です。南北朝時代には、近隣の流谷八幡神社の宮司が病弱な人々のために湯治場を開いたと伝えられています。
その湯治場は評判となり、やがて流谷極楽寺が建立されると、参拝客が極楽寺に立ち寄ってから高野山へ向かうことが習慣となりました。温泉は「極楽温泉」などと呼ばれ、多くの人々に利用されていたとされています。
一度途絶えた温泉の歴史と再興
その後、神社が焼失した際に極楽寺も類焼し、寺にあった極楽湯室も失われました。温泉は再建されることなく廃湯となり、かつての湯治場の跡だけが残されました。
しかし、1935年に当時の天見温泉の見取り図が発見されたことをきっかけに、地域では温泉を再興しようという機運が高まりました。そして1949年、現在の南天苑が温泉旅館として開業し、天見温泉の歴史が再び動き始めました。
金剛葛城山系に囲まれた静かな温泉地
天見温泉は、四方を金剛葛城山系の豊かな自然に囲まれています。都会の喧騒から離れ、山里ならではの静かな環境の中で温泉と自然、歴史的な建築を楽しめるのが魅力です。
歴史ある南天苑の建築美や日本庭園を眺めながら過ごす時間は、一般的な温泉旅行とはひと味違った趣があります。高野山参詣の歴史を感じながら、自然に包まれた山里でゆっくりとした時間を過ごせる温泉地です。