歴史
大念仏寺の歴史は、比叡山延暦寺の天台宗僧・良忍によって始まりました。大治2年(1127年)、鳥羽上皇の勅願を受け、摂津国住吉郡平野庄(現在の大阪市平野区)に建立されました。平野殿・坂上広野の私邸内にあった融通念仏道場である修楽寺の別院が、大念仏寺の前身となっています。
その後、第6世良鎮の死去(寿永元年、1182年)により一時的に衰退しましたが、融通念仏の教えは嵯峨清凉寺や花園法金剛院、壬生地蔵院などで継承されていました。元亨元年(1321年)、第7世法明が大念仏宗(融通念仏宗)を再興し、これが現在に至る大念仏寺の基盤となりました。
発展と移転
元和元年(1615年)には、平野庄代官の末吉孫左衛門から寺地を寄進され、現在の場所に寺院が構えられました。それまで大念仏寺は一定の場所を持たず、様々な場所を転々としていましたが、これによって安定した寺院運営が可能となりました。さらに、元禄年間(1688年~1704年)には第46世・大通によって諸堂が再建され、融通念仏宗の名称が確立されました。
境内の見どころ
現在の大念仏寺は24,000m²(約7300坪)の広大な敷地に30余りの堂宇を有し、その中でも本堂は大阪府内最大の木造建築物です。この本堂は大阪市指定有形文化財に指定されており、総欅造りで銅板葺きの壮麗な建築です。他にも多くの歴史的建造物や重要文化財が点在しており、歴史を感じさせる雰囲気が境内全体に漂っています。
本堂
本堂は、大阪市指定有形文化財に指定されています。以前の本堂は寛文3年(1663年)に建造されましたが、1908年(明治31年)に火災で焼失し、1938年(昭和13年)に再建されました。総欅(けやき)造りの銅板葺きで、大阪府下最大の木造建築物として有名です。
現在の本堂は、1938年(昭和13年)に竣工したもので、総欅造り銅板葺の堂々たる建物です。棟行(南北)は39.1メートル、梁行(東西)は49.8メートルあり、大阪府下最大の木造建築として知られています。堂内には、本尊十一尊天得阿弥陀如来の画像が掲げられ、その両脇には名仏師・新納忠之介の手による多聞天王や八幡大士の木像が立っています。また、左右の宮殿には宗祖聖應大師(良忍上人)と中祖法明上人の木造が安置されています。
経蔵
経蔵もまた大阪市指定有形文化財に指定されており、元文2年(1737年)頃に再建されました。この建物も大念仏寺の歴史を物語る重要な建物です。
円通殿(観音堂)
円通殿は1989年(平成元年)に改修され、復元されました。ここには、大通上人の直筆による扁額「圓通殿」が掲げられており、本尊として聖観世音菩薩(立像)が祀られています。この像は、伝教大師最澄の作と伝えられています。
宝物館
大念仏寺には、1980年(昭和55年)に建設された宝物館もあり、ここには寺の歴史を物語る数々の貴重な品々が収められています。特に、著名な幽霊掛軸などが展示されています。
鐘楼
鐘楼は文化3年(1806年)に改鋳されたもので、大念仏寺の敷地内にある重要な建築物です。右大臣大炊御門家孝の銘文が記された鐘は、歴史的価値の高い名鐘とされています。
南門(大阪市指定有形文化財)
南門は、旧・古河藩の陣屋門で、江戸時代初期に建立されました。大念仏寺境内における最も古い建築物であり、歴史的な価値が高いです。明治時代の廃藩置県後は、平野小学校の表門として1927年(昭和2年)まで使用されていましたが、1962年(昭和37年)に現在の位置に移築されました。
霊明殿
霊明殿は、保元元年(1156年)に第三世明應上人の手によって創建された建物で、鳥羽上皇の霊牌と御真影を祀るために建立されました。江戸時代に徳川家康が合祀され、権現造りの社殿が再建されました。今日まで修理を重ね、江戸時代の遺構が残されています。
その他の重要な建築物
大念仏寺の境内には、数多くの重要な建築物があります。
楽邦殿(納骨堂)
1998年(平成10年)に建立された楽邦殿は、納骨堂として使用されています。1階は休憩所、2階は本堂として使用されています。
白雲閣
白雲閣は、2階建ての多目的会館として使用され、平成10年に竣工されました。
山門(大阪市指定有形文化財)
山門は、宝永3年(1706年)に第四十六世法主大通上人によって建立されました。「大源山」の扁額は後西天皇の皇女・本覚院宮徳厳尼の真筆です。
毘沙門堂
毘沙門堂は、寛政11年(1799年)に再建された建物で、行基作の伝承がある毘沙門天を祀っています。
行事
大念仏寺は年間を通じて多くの行事が行われています。その中でも特に有名なのが「万部おねり」という行事で、毎年5月1日から5日にかけて行われます。25人の菩薩が本堂へと練り歩く様子は、極楽浄土を表現した華やかな光景で、大阪市指定無形民俗文化財にも指定されています。
その他の年中行事
- 修正会:1月1日に行われる新年の祈祷行事。
- 百万遍会:1月16日と5月16日に行われる、巨大な数珠を使った法要。
- 毘沙門天護摩供:2月に行われる護摩供養。
- 納骨諸霊追善法要:3月と8月に先祖供養として行われる法要。
- 中祖法明上人御忌法要:7月7日に行われる特別な法要。
- 盂蘭盆会:8月15日に行われる盂蘭盆の法要。
文化財
大念仏寺には多くの国宝や重要文化財が保管されており、宗教的な価値だけでなく、歴史的・文化的な価値も高い寺院です。たとえば、国宝として指定されている「毛詩鄭箋残巻」や、後小松天皇が宸翰された「融通念仏勧進帳」など、歴史的な文書や経典が多く残されています。
国宝
以下の1巻が国宝に指定されています:
- 毛詩鄭箋残巻
重要文化財
大念仏寺には以下の重要文化財があります:
- 明徳版本融通念仏縁起(2巻)
- 浄土論(1巻)
- 後小松天皇宸翰融通念仏勧進帳(1巻)
重要美術品
重要美術品には以下のものが含まれています:
- 後水尾天皇宸翰古歌御懐紙
- 後奈良天皇宸翰後柏原天皇御製御抜書
- 紺紙金字の法華経や般若心経など、多くの貴重な巻物
大阪市指定有形文化財
大念仏寺には多くの大阪市指定有形文化財もあります。たとえば、
- 山門(扁額・棟札を含む)
- 本堂
- 経蔵
- 南門
- 木造釈迦如来及び十六羅漢立像(17軀)
これらの像の中でも、木造釈迦如来立像は、黄檗様式の影響が強く、像高は125.7センチメートルです。この像は弘化2年(1845年)に制作され、大坂の仏師・今来太右衛門によって手がけられました。
大阪市指定有形民俗文化財
大阪市指定有形民俗文化財としては、迎講阿弥陀如来像や木造四天王立像、楽山五万人勧進回向地蔵菩薩像などがあります。
大阪市指定無形民俗文化財
毎年5月1日から5日まで行われる「万部おねり」は、大阪市指定無形民俗文化財に指定されています。この行事では、25人の菩薩が外界(娑婆)から本堂(極楽浄土)に練り歩き、極楽浄土の世界が表現されます。
アクセス
大念仏寺は大阪市内にあり、公共交通機関で簡単にアクセスできます。
鉄道でのアクセス
JR西日本の平野駅から徒歩5分、またはOsaka Metroの平野駅から徒歩8分で到着します。
バスでのアクセス
大阪シティバス「JR平野駅筋」停留所、または近鉄バス「平野元町六丁目」停留所からもアクセス可能です。
まとめ
大念仏寺は融通念仏宗の総本山として、長い歴史と豊かな文化を誇る名刹です。広大な境内には、数多くの重要文化財や歴史的建造物が点在しており、訪れる人々に深い感銘を与えています。また、年間を通じて多くの行事が行われており、その中でも特に有名な「万部おねり」は、絢爛豪華な行列で極楽浄土の世界を体現しています。歴史と信仰の結晶ともいえるこの寺院は、大阪を代表する観光名所の一つとして、多くの人々に親しまれています。